子どもたちにこそ、本物の野菜の味を知って欲しい――大江ファーム
23歳、1冊の本との出会い
――どうして有機農業を始めたのですか?
大江さん:学校を卒業して普通栽培を営んでいた頃、福岡正信さんの「自然農法」という本に出会い、衝撃を受け、福岡さんに習って自然農法を始めました。23歳に始めて、1年目は失敗。ちょうどその頃、隣の農家のおじいちゃんが農薬中毒で倒れて、これはおかしなことだと思った。それでも周りは、農薬をしっかりまいていた。
その後も10年間ずーっと失敗続きなんだけど、そんなに短い間に成功するものではないと気付いたね。
――いきなり有機農業を始めて、まわりには反対されませんでしたか?
大江さん:とにかく変なことをやっているもんだから、周りから変わり者扱いされるんだよ。ずっとひとりぼっち。でも、人に言われるのは気にならなかった。迷惑かけているわけじゃないから。そんなところが変り者らしいところだ。
特に、親父に反対されたこと。10年間ずっと戦ってきた。私たちの農業が受け入れ初めてから何も言わなくなったけど、つらかったね。
野菜を育てるのではなく、土を本来の形の戻してあげること
――どんな肥料を使っているんですか?
大江さん:いろいろ試したけど、EM菌を使っているよ。発酵と腐敗の違いはわかる?
――発酵はお味噌とかおしょうゆを作るときによく聞きますよね。
大江さん:そう、発酵は美味しいものを作る。腐敗はその逆。腐っていくこと。土にはヨーグルトと一緒で善玉菌が存在し発酵している。農薬は善玉菌を殺す。EM菌は善玉菌。農薬がまかれた土にEM菌を入れることで土を本来の状態に戻すことができる。
お野菜を育てようとしても失敗ばかりだったけど、土を育てることで徐々に美味しい野菜が育ってきたんだよ。
そのEM菌を使っていることがテレビに取材されて、それを知った同じことをしている農家さんが連絡をくれて、仲間が増えていったんだよね。
子どもたちにこそ、本物の野菜の味を知って欲しい
――山都町の小学校に有機野菜を提供していると伺いましたが?
大江さん:以前までは、給食で地域の野菜は使われていなかった。それはおかしいと思ったんだよね。子供にこそ本物の野菜の味を知ってもらいたくて。例えば、おばあちゃんが子供に「トマト採ってきてー」とお願いすると、スーパーで買ったようなパック詰めになったトマトを冷蔵庫から取ってくる。そうじゃなくて、もっと身近に畑を感じてもらいたい。
しかしながら、地元の畑で育った有機野菜を学校給食に取り入れることはとっても難しいことだった。既に学校と契約している外部の業者さんもいるし、コストも安かった。周りの支援もあり地元の野菜に切り替えることが出来ました。
でも、問題はそれで終わらなかった。栄養士さんも賛同してくれたんだけれど、今までレトルトで調理していた調理師さんが、調理の手間を敬遠し、反対があったが、栄養士さんもめげずに説得を続けてくれた。
出したくても出せない、そんな時間が続いたんだけれど、ようやく子どもたちに本物の野菜を食べてもらえるようになったんだ。
お客さんに伝えるということ
――ご苦労されたと思うのですが、震災時はどんな状況でしたか?
大江さん:山都町は通常0.04〜0.05ベクレルのところ、震災後は0.1〜0.2ベクレル。このくらいの数字なんだけど、特にお米の風評で出荷の数は減ったよ。
お客様へ安全は伝える努力は、モニタリングで出来る。でも、安心は心の問題。食べてもらうことは強制出来ないから、難しい。震災後、イベントが多くなってよく売れたけど、県内外のスーパーには並ばなくなってしまった。
普通の消費者に、普通に食べてもらえるようにしたい。
農家が生産情報を伝えていかなきゃだめだ。
――モニタリングが入ったことでの影響はあるんですか?
大江さん:モニタリングはとても大変だよ。1種につき1K検査に出さなきゃいけない。うちは60種やっているから。しかも、使われた野菜は使えないから、とっても勿体ない。
モニタリングのために野菜を作っているようなものだよ。だから、モニタリングの方法も、どうにかしなくちゃいけない。あと、これを見て。
――あれ?「未検査」っていう記載がラベルに書かれていますね。
大江さん:そう、これは米の等級検査を受けていない表記。ちゃんと放射能の検査は受けていてND。シールも別に貼ってあるんだけどね。
――でも放射能検査を受けていないと一見思われてしまうかも。
大江さん:そうなんだよね。誤解を生むのも仕方がない。自分たちが販売する際は説明できるんだけど、そうじゃない場合は説明しづらい。
だから、今年から米の等級検査は受けるようにしているよ。
放射能だけじゃないんだよ
大江さん:放射能による内部汚染ももちろん気にしてほしいけど、残留農薬による内部汚染にも目を向けてほしい。
――確かに、長年解決されていない問題だから、どうにかしないといけないと思います。
大江さん:震災後、冷凍食品がよく売れた。生の野菜は危険だという情報が流れたからね。冷凍食品は残留農薬の危険性が高いことも気づいてほしい。
――東京の人にしてほしいことってありますか?
大江さん:情報を精査してほしい。そして、畑に来てほしい。実際に畑を見ないとわからない。来て見て、食べて本物の味を知って、他との違いに気づくことが大事だよ。子どもたちにこそ、だね。
町も土でつながる
――山都町は有機農家が盛んで、特に若い方がIターンで定住するほど。素晴らしいことですね!
大江さん:ありがたいことだよ!土と地域が守られるから。でもどうやったら定住できるかが大事だね。そのために、地域のおじいちゃん、おばあちゃんと関わっていくことを教えている。
――それはどんなことですか?
「町や地区での共同作業に全て参加しなさい。」って教えているよ。ちゃんと関われると、地域に受け入れてもらえる。お年寄りからいらなくなった農器具とか譲ってもらえたりするし、お年寄りも喜ぶしね。
――地域のつながりも生まれてよい循環!町も土でつながっているんですね!
大江さんの夢
――最後に大江さんの夢ってなんですか?
夢っていうより、楽しんでいたいね。チャコ(奥さん)と2人で楽しめたらいいね。
――今も楽しんでいらっしゃる様子ですよ!是非、これからも楽しんで土力していってください!
大江さん、ありがとうございました!
【プロフィール】
福島県喜多方市山都町 大江ファーム 大江 一男(おおえ かずお)さん
有機農業を始め33年。60種類もの有機野菜を育て、土を守り続ける。自家製の発酵肥料を使い、微生物の力を借りて循環型農業に取り組んでいます。そんな自然の恵みを大江さんは「土力(どりょく)」と呼んでいます。
土力と太陽の恵みのブログ
【大江さんのお野菜をいただこう!】
1年を通して60種類ほどの有機野菜と有機米を栽培。
・旬の野菜ボックス(冬季を除く) 2,000円〜
・コシヒカリ1Kg 600円
・もち米(こがねもち)1Kg 700円
・黒米 100g 200円
・玄米麹味噌1Kg 900円
◆ご注文はこちらまで
TEL/FAX: 0241-38-2740
【取材記者の一言】「Baku Table」千葉夢実
いつもお世話になっている大江さんと向き合う1時間。まるでひとつのドラマを見ているかのようで、楽しすぎてあっという間でした!
お野菜に対する30年の思いはきっと語りつくせぬものだったと思います。その思いはすべてお野菜にこめられている。もっともっとたくさんの方に大江さんのお野菜を食べてもらうお手伝いをしたいと思いが募りました。これからも大江さんと共に福島を盛り上げていきたいと思います。
「Baku Table」
会津若松【ギャラリー ひと粒】を拠点にナチュラルでからだにやさしいごはんを作っています。これまでも山都町の大江ファームの有機野菜、福島県二本松の雑穀とオイルブランド「たなつもの」の素材を使い福島の素材を積極的に取り入れています。とある御縁から、福島県山都町の有機農家 大江ファームに出会い、旬の美味しいお野菜を使わせていただいています。
https://www.facebook.com/bakutable
Photo by Masatomo Kumakubo
――どうして有機農業を始めたのですか?
大江さん:学校を卒業して普通栽培を営んでいた頃、福岡正信さんの「自然農法」という本に出会い、衝撃を受け、福岡さんに習って自然農法を始めました。23歳に始めて、1年目は失敗。ちょうどその頃、隣の農家のおじいちゃんが農薬中毒で倒れて、これはおかしなことだと思った。それでも周りは、農薬をしっかりまいていた。
その後も10年間ずーっと失敗続きなんだけど、そんなに短い間に成功するものではないと気付いたね。
――いきなり有機農業を始めて、まわりには反対されませんでしたか?
大江さん:とにかく変なことをやっているもんだから、周りから変わり者扱いされるんだよ。ずっとひとりぼっち。でも、人に言われるのは気にならなかった。迷惑かけているわけじゃないから。そんなところが変り者らしいところだ。
特に、親父に反対されたこと。10年間ずっと戦ってきた。私たちの農業が受け入れ初めてから何も言わなくなったけど、つらかったね。
野菜を育てるのではなく、土を本来の形の戻してあげること
――どんな肥料を使っているんですか?
大江さん:いろいろ試したけど、EM菌を使っているよ。発酵と腐敗の違いはわかる?
――発酵はお味噌とかおしょうゆを作るときによく聞きますよね。
大江さん:そう、発酵は美味しいものを作る。腐敗はその逆。腐っていくこと。土にはヨーグルトと一緒で善玉菌が存在し発酵している。農薬は善玉菌を殺す。EM菌は善玉菌。農薬がまかれた土にEM菌を入れることで土を本来の状態に戻すことができる。
お野菜を育てようとしても失敗ばかりだったけど、土を育てることで徐々に美味しい野菜が育ってきたんだよ。
そのEM菌を使っていることがテレビに取材されて、それを知った同じことをしている農家さんが連絡をくれて、仲間が増えていったんだよね。
子どもたちにこそ、本物の野菜の味を知って欲しい
――山都町の小学校に有機野菜を提供していると伺いましたが?
大江さん:以前までは、給食で地域の野菜は使われていなかった。それはおかしいと思ったんだよね。子供にこそ本物の野菜の味を知ってもらいたくて。例えば、おばあちゃんが子供に「トマト採ってきてー」とお願いすると、スーパーで買ったようなパック詰めになったトマトを冷蔵庫から取ってくる。そうじゃなくて、もっと身近に畑を感じてもらいたい。
しかしながら、地元の畑で育った有機野菜を学校給食に取り入れることはとっても難しいことだった。既に学校と契約している外部の業者さんもいるし、コストも安かった。周りの支援もあり地元の野菜に切り替えることが出来ました。
でも、問題はそれで終わらなかった。栄養士さんも賛同してくれたんだけれど、今までレトルトで調理していた調理師さんが、調理の手間を敬遠し、反対があったが、栄養士さんもめげずに説得を続けてくれた。
出したくても出せない、そんな時間が続いたんだけれど、ようやく子どもたちに本物の野菜を食べてもらえるようになったんだ。
お客さんに伝えるということ
――ご苦労されたと思うのですが、震災時はどんな状況でしたか?
大江さん:山都町は通常0.04〜0.05ベクレルのところ、震災後は0.1〜0.2ベクレル。このくらいの数字なんだけど、特にお米の風評で出荷の数は減ったよ。
お客様へ安全は伝える努力は、モニタリングで出来る。でも、安心は心の問題。食べてもらうことは強制出来ないから、難しい。震災後、イベントが多くなってよく売れたけど、県内外のスーパーには並ばなくなってしまった。
普通の消費者に、普通に食べてもらえるようにしたい。
農家が生産情報を伝えていかなきゃだめだ。
――モニタリングが入ったことでの影響はあるんですか?
大江さん:モニタリングはとても大変だよ。1種につき1K検査に出さなきゃいけない。うちは60種やっているから。しかも、使われた野菜は使えないから、とっても勿体ない。
モニタリングのために野菜を作っているようなものだよ。だから、モニタリングの方法も、どうにかしなくちゃいけない。あと、これを見て。
――あれ?「未検査」っていう記載がラベルに書かれていますね。
大江さん:そう、これは米の等級検査を受けていない表記。ちゃんと放射能の検査は受けていてND。シールも別に貼ってあるんだけどね。
――でも放射能検査を受けていないと一見思われてしまうかも。
大江さん:そうなんだよね。誤解を生むのも仕方がない。自分たちが販売する際は説明できるんだけど、そうじゃない場合は説明しづらい。
だから、今年から米の等級検査は受けるようにしているよ。
放射能だけじゃないんだよ
大江さん:放射能による内部汚染ももちろん気にしてほしいけど、残留農薬による内部汚染にも目を向けてほしい。
――確かに、長年解決されていない問題だから、どうにかしないといけないと思います。
大江さん:震災後、冷凍食品がよく売れた。生の野菜は危険だという情報が流れたからね。冷凍食品は残留農薬の危険性が高いことも気づいてほしい。
――東京の人にしてほしいことってありますか?
大江さん:情報を精査してほしい。そして、畑に来てほしい。実際に畑を見ないとわからない。来て見て、食べて本物の味を知って、他との違いに気づくことが大事だよ。子どもたちにこそ、だね。
町も土でつながる
――山都町は有機農家が盛んで、特に若い方がIターンで定住するほど。素晴らしいことですね!
大江さん:ありがたいことだよ!土と地域が守られるから。でもどうやったら定住できるかが大事だね。そのために、地域のおじいちゃん、おばあちゃんと関わっていくことを教えている。
――それはどんなことですか?
「町や地区での共同作業に全て参加しなさい。」って教えているよ。ちゃんと関われると、地域に受け入れてもらえる。お年寄りからいらなくなった農器具とか譲ってもらえたりするし、お年寄りも喜ぶしね。
――地域のつながりも生まれてよい循環!町も土でつながっているんですね!
大江さんの夢
――最後に大江さんの夢ってなんですか?
夢っていうより、楽しんでいたいね。チャコ(奥さん)と2人で楽しめたらいいね。
――今も楽しんでいらっしゃる様子ですよ!是非、これからも楽しんで土力していってください!
大江さん、ありがとうございました!
【プロフィール】
福島県喜多方市山都町 大江ファーム 大江 一男(おおえ かずお)さん
有機農業を始め33年。60種類もの有機野菜を育て、土を守り続ける。自家製の発酵肥料を使い、微生物の力を借りて循環型農業に取り組んでいます。そんな自然の恵みを大江さんは「土力(どりょく)」と呼んでいます。
土力と太陽の恵みのブログ
【大江さんのお野菜をいただこう!】
1年を通して60種類ほどの有機野菜と有機米を栽培。
・旬の野菜ボックス(冬季を除く) 2,000円〜
・コシヒカリ1Kg 600円
・もち米(こがねもち)1Kg 700円
・黒米 100g 200円
・玄米麹味噌1Kg 900円
◆ご注文はこちらまで
TEL/FAX: 0241-38-2740
【取材記者の一言】「Baku Table」千葉夢実
いつもお世話になっている大江さんと向き合う1時間。まるでひとつのドラマを見ているかのようで、楽しすぎてあっという間でした!
お野菜に対する30年の思いはきっと語りつくせぬものだったと思います。その思いはすべてお野菜にこめられている。もっともっとたくさんの方に大江さんのお野菜を食べてもらうお手伝いをしたいと思いが募りました。これからも大江さんと共に福島を盛り上げていきたいと思います。
「Baku Table」
会津若松【ギャラリー ひと粒】を拠点にナチュラルでからだにやさしいごはんを作っています。これまでも山都町の大江ファームの有機野菜、福島県二本松の雑穀とオイルブランド「たなつもの」の素材を使い福島の素材を積極的に取り入れています。とある御縁から、福島県山都町の有機農家 大江ファームに出会い、旬の美味しいお野菜を使わせていただいています。
https://www.facebook.com/bakutable
Photo by Masatomo Kumakubo
- インタビュー
- 2013.10.19 Saturday
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